ブラジル情報 民話 ジョアン・グルメテ

大蛇.jpg 昔たいそうバカな靴屋と、その靴屋にいつも忠告してくれる弟子がいた。ある時、靴屋がゴムのりを冷やそうとして、瀬戸物のかけらに入れておくと、7匹のハエがその中に落ちて動けなくなり死んでしまった。弟子はこれを見て、帽子に大きな文字で「一打ち七殺のジョアン・グルメテ」と書くように親方へ薦め、親方は言われた通りにした。
 これを見た人たちは、この靴屋はたいそう強い男に違いないと思い込んだ。
 ある時、何もかも破壊した上人を食う獰猛な大蛇が現れた。その大蛇は7つの頭と7枚の舌を持ち、毎日人間を探しにやってきては7人ずつ食べ、もうその町の男を食いつくしてしまって、女を食っていた。国王は軍隊にその大蛇を殺すように命じたが、軍隊にもどうすることもできなかった。その時、「町にたった一打で7人も殺した恐れを知らぬ勇者がおり、大蛇を退治できるのはこの者をおいていないだろう、といううわさを王は耳にした。
 王はジョアン・グルメテお呼び寄せ、その大蛇を殺すように命じた。靴屋はたいそう驚いたが、しかたなく、「大蛇を殺しに参りましょう」と答えた。靴屋は、国王の御前から退出すると、泣きそうになって弟子のところへ行き、
「助けてくれ。こんどはおれもおしまいだ」といった。
すると弟子は言った。
「なんでもありません。大蛇のところには古い教会がありますから、大蛇が遠くのほうに見えたら、走ってこの教会の中へ逃げ込みなさい。奥のほうに穴がありますから、そこから外へ出なさい。大蛇も中に入るにちがいありませんから、その時扉を閉めて中へ閉じ込め、飢え死にさせましょう。それでうまくいくでしょう」
 ジョアン・グルメテは大変満足して出かけて行った。多くの人々が、怪獣の最後を見届けようと、後ろから付いて行った。
 グルメテは、大蛇を遠くに見つけると、あわてて群をなして逃げる人々と一緒に、教会の中へ入った。獰猛な大蛇も、その後を追って中へ入った。靴屋は教会の奥にある穴から逃げたが、大蛇が図体がとても大きいので、穴を通りぬけることができなかった。外にいた人々が扉を閉め、やがて猛獣は中で飢え死にしてしまった。そこでグルメテは七つの首を王様に献上したところ、王様は伯爵の称号とたくさんのお金を与えた。
 またある時、三人のとても大きくて恐ろしい巨人が現れて、あらゆるものを破壊し、人を殺し、盗みを働いたが、誰も三人を退治することができなかった。人々は国王に、グルメテだけがあの悪人たちを退治できると知らせた。そこで王は、グルメテを呼び寄せ、この大きな災難から町を救ってくれるように頼んだ。靴屋は、今度こそ生きた心地もなく、王の御前を立ち去ると弟子のところへ行き言った。
 「なんでもありません。かくれていなさい。巨人たちがやってくる前に木に登っているのです。巨人たちはそこへやって来て、食べたり飲んだり休んだりするのでしょう。やつらの一人ひとりの上に、頭程の大き大男.jpgい石を三つ、綱に縛ってつるさげておきなさい。そして巨人が寝たら、綱を一本切って最初の巨人の上へ落とすのです。こうして一ずつ落としていけばいいのです」
ジョアン・グルメテは出発した。とても大きい木のところへ着くと、巨人がいつも眠っているので、体の重みで三つの窪みができていた。 グルメテはとても重い石を三つ拾うと三人の巨人のちょうど頭の上にくる位置の枝に石をつるした。そして静かに木によじ登り、葉の茂みに身を隠した。
 巨人たちが近づいてくると地響きがして、グルメテは恐ろしさのあまり危うく転げ落ちそうになった。巨人がそこへやってくると、もう少しでグルメテのいる木にぶつかりそうになった。やがて巨人達はたらふく飲んだり食べたりし、すっかり酔っぱらって横になり、寝てしまった。グルメテは石の綱を一本切ると、石はうまく一人の巨人の頭に落ちた。その巨人は目を覚まして、
「なんてこった。お前たちは俺をからかう気か。今俺の頭をげんこつでなぐっただろう」と言ったが、すぐさま寝入ってしまった。
 そこでグルメテはもうひとつの石の綱を切った。その石も別の一人の巨人の頭に当たり、その巨人もまた仲間の一人が自分の頭をぶったのだと腹をたて、
「もしこんなことが続くようなら、俺は本気で仕返しをするぞ」と言った。
 このように巨人たちは騒いでいたが、やがて寝入ってしまった。
 しばらくして、グルメテは最後の石を落した。その石は三番目の巨人に命中し、巨人たちは仲間がしたものだと思いこんで、お互いに殴り合い、ぶつかり合い、争ってとうとう地面に伸びてしまった。ジョアン・グルメテは木から下りて、三人の首を切り、それを持って国王に見せに行った。そこで盛大な宴会が催され、グルメテ伯爵は将軍の称号とたくさんのお金をもらって、大金持ちになった。
 それから少しして、王は征服の為に戦争を起こした。しかし王の軍勢はほとんど壊滅し、兵士たちが一番信頼していたラカイオ将軍も戦死した。王が非常に落胆していると、ある者が、「一打ち七殺の将軍ジョアン・グルメテ伯爵を呼ぶよりほかに方法がないでしょう」と助言した。王はグルメテを呼び寄せると、
「伯爵よ、戦いに行って勝利をもたらしてくれ。その時私の娘を妻にやろう」と約束した。
 靴屋は恐ろしさのあまり卒倒しそうになったが、弟子に会いに行き、
「大蛇や巨人はばかだった。だが今度は武器を使う戦争だ。ああ助けてくれ」と言った。
かつての弟子は親方を勇気づけて、
「ラカイオ将軍の軍服を着て、将軍の馬に乗り、後は運を天に任せなさい」と言った。
 グルメテは出発した。戦場では、ラカイオ将軍の国王に会いに宮廷へ行っているということにしてあり、真相は兵士たちには知らされていなかった。グルメテはラカイオ将軍の軍服を身につけ、十分に武装し、将軍の愛馬に跨り前線に出かけて行った。馬が駆け出すと、グルメテは馬の乗り方を知らなかったので、落ちそうになり、
「落ちる(ラ・カイオ)落ちる(ラ・カリオ)」と叫んだ。
 これを聞いた兵士たちは、本物のラカイオ将軍だと思い込み、勢いづいて進撃し、敵を打ち破ってしまった。このようにして戦いは終わり、グルメテは勝利者として王女と結婚した。
 「結婚式の夜、盛大なパーティーが催され、グルメテは飲みすぎて、ベットに入って横になると、直ぐに豚のようないびきをかき、夢を見て大きな声で寝言を言い始めた。
「ここんところはもっと押すんだ。この底皮を打て。糸にろうを塗れ」
 王女は大いに驚いて不愉快になり、次の日父王に、
「夫は一晩中、靴屋の仕事のことを寝言で言っていました。私は靴屋と結婚したにちがいありません」と不平を言った。
 国王は兵士に見張りをするよう命じ、娘に、
「もし今夜も昨夜のように寝言をいったなら私に知らせなさい。あいつを捕えて殺してやるから」と言った。
グルメテの弟子はこのことを知って、親方にこう教えた。
「今夜も昨夜のように仕事のことを寝言でいったら殺されますよ。今日は一滴も酒を飲んではいけません。ベットに入ったら眠って戦争の夢を見ているふりをして兵士たちに叫び、剣を抜き、壁に切りつけなさい。そうすればうまくいくでしょう」
グルメテは言われたようにした。ベットの中で寝たふりをして、叫び声を上げて、軍隊に命令し始め、剣を取り、もう少しで王女を傷つけそうになった。王女はびっくりしてしまった。王様はこれを聞いてたいそう満足し、王女を叱っていった。
「お前は偉大な男、勇敢な戦士と結婚したのだ。靴屋の話をするなんてとんでもない。二度とゆうでないぞ」
 それからのち、グルメテは安心して眠り、いつも底皮や靴のことを夢に見たそうです。

kukulcanet.com